第3講/御幣之大事・天地四方一切清浄之大祓

第3講/御幣之大事・天地四方一切清浄之大祓

今回紹介する作法は、拙書『線香護摩祈祷法』の中でも紹介した祓いの作法です。

次第書の中でも説明しておりますが、この作法は線香護摩に附随した作法ではありません。

当地の山形県河北町にある真言宗醍醐派の寶壽院の本間龍演師が編んだ『寶壽院柴燈護摩大火生三昧法』の中で、結界内を清浄する為に行う作法です。

本間先生は昭和62年に遷化なされるまでに、立螺の名人として名を馳せた他、柴燈護摩を儀式として調え火渡りと一体化した作法を全国に広めました。

この二つの祓いの作法は本間先生の御子息・奎児師の特別 のご好意で、公開する事を許されたものです。

御幣之大事

抑も此(そもそ)の御幣たるや嚢祖神変大菩薩(のうそしんぺんだいぼさつ)より
直々(ちゃくちゃく)相承したる法則(ほっそく)なり。
第一に七難の塵を払い。(①)
第二に五倫五軆(ごりんごたい)より起る罪咎汚れ祟り障り等を祓い清め。(②)
第三には三穢三毒(さんえさんどく)の業煩悩を祓い浄め給ふもの也。(③)

神歌

玉垣や玉吹き降ろす神風に

汚れ障りの雲は晴れにき

玉垣や玉吹き降ろす神風に

思い煩ろう雲は晴れけり

玉垣や玉吹き降ろす神風に

悩み煩ろう雲は晴れけり

(御幣の振り方)ロイ

天地四方一切清浄之大祓

天地四方一切清浄の大祓を以って清め申す
天清浄とは天の七曜九曜二十八宿を
清め奉る
地清浄とは地の神三十六禽を清め奉る
六根清浄とは即ち吾身我軆
其の身其の軆を浄め申す

神歌

玉垣や玉吹き降ろす神風に

汚れ障りの雲は晴れけり

(御幣の振り方)ロイ

解説

山形では、本間龍演師の伝えた諸作法を実践している行者が多数います。

私が自坊を構える東根市や、寒河江市の慈恩寺で行われる柴燈護摩や火渡りは、まさに龍演師直伝の作法が修法されています。

また、本間一族は修験者の家系で、当地では様々な行事で祈祷をなさっております。

私もテレビの取材を通 じ度々、拝見しています。

紹介した二つの祓いの作法は、祈祷に入る前の道場や信者宅、行者および信者を祓う為に修されています。

願意や修法場所により両部で祈祷しようと思っても、僧形で祝詞まで本式にあげるのをためらう方が多いのではないでしょうか。

そういう場合に祝詞に代え用いるのに適していると思われます。

私も線香護摩で祝詞を上げるのですが、場合に応じて御幣之大事や天地四方一切清浄之大祓を修しています。また時としては祝詞と併せ用います。

これは実際にやってみての感触ですが、左右左と神道の通常の作法と同じく祓う御幣之大事は、信者を祓う際に適しています。

天地四方一切清浄之大祓は、祈祷する場所や結界などの清浄を期す場合に用いるのがよいでしょう。

いずれの作法も、先ず御幣を捧げ持ち、祓いの文を唱えた後に図に従い御幣を振ります。

唱える際は、声を篭らせず明朗に詠ずる事が肝要です。

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