第18講/甑岳観音寺文書『御幣切方大事』より(その8)

第18講/甑岳観音寺文書『御幣切方大事』より(その8)

当寺には同じ神仏に、複数の御幣が存在するものもあります。

今回はそうした御幣を紹介し、当寺に伝わる御幣の紹介の最終回とします。

『水神』その2

この御幣は一番シンプルな姿をしております。知々理は三、五、七と入ります。

水は生活には欠かせないものです。

屋敷神や氏神は稲荷というイメージが強いものがありますが、昔も今も水神は一番身近な神なのです。

こうした事がこの姿に反映していると思われます。水神についての詳しい解説は第13講を参考にして下さい。


『水神』その3

当地山形のような北国では、冬には川や湖が凍ります。

当然井戸も凍ったでしょう。その際に使用したのがこの御幣です。

埋めらたり、枯れた井戸の水神上げをしますが、そうした場合に使用するのはこの御幣を用います。

知々理は七、五、三と入りますが、用いる紙は数枚(枚数は明記されていませんが、五枚程度)とし、剣先部分を両方へ二三枚まくります。


『荒神一本幣』

11講に「三宝荒神」幣を紹介しましたが、ことらは三宝が付かない「荒神」幣です。

ネットで調べると「荒神の信仰は屋内の火所にまつられる三宝荒神,屋外にまつられ同族や部落でまつる地荒神,牛馬の守護神としての荒神の三つに分けられる」とあります。

しかし、一般に三宝荒神と荒神は同一として捉えられる事が多く、当寺でも使い分けていたとは考えられません。

「三宝荒神」幣が三色の紙を用いていたのに対し、「荒神一本幣」は白紙のみで謹製される事から、前者は新玉って祀っていました。

対して、三色の紙がない場合はこの「荒神一本幣」を日常的に用いていたのではないでしょうか。

役行者が金剛山において三宝荒神を感得した際に「我は是三寶衛護の神にして、常に浄信修善のものを扶けて、不信放逸の者を罰す」と告げたといいます。

自坊の守護として祀るべき御幣であると言えます。知々理は中心より三、四、七、五、三、一と入り、幣串の長さは一尺八寸です。

『大日』その2

詳しい解説は12講に譲ることにします。

こちらの御幣はシンプルな姿は金剛界大日として祀っております。

知々理は三、七、五と入ります。前者(12項)は胎蔵界大日です。

口伝『五大尊』

五大尊に関係する御幣は度々紹介してきました(不動尊一本五大尊、五大尊祓い御、一本五大尊幣)。

五大尊は中央に不動を据え、東方は降三世、南方は軍荼利、西方は大威徳、北方に金剛の各明王を以って、未来世に於いて淫業の衆生を摧伏し、三宝を護持する為に、大日、阿?、宝生、無量壽(阿弥陀)、不空成就の五仏に教令し忿怒の姿に変現した諸尊の総称です。

行者を叱咤激励する守護神たちでもあります。

知々理は七、五、三、七、五、三、七、七、五、三、七、五、三と入ります。写真は一枚の紙で折っておりますが、実際には一体6枚の紙を裁たなければなりません。

尊によって紙の色が違い、不動は黄色、降三世は青、軍荼利は赤、大威徳は白、金剛は黒です。

『権現之幣』

権現は仏が仮の姿で現れている神の称号です。

蔵王権現を始め、愛宕権現、飯綱権現など、その山、地域に祭られている諸権現も含め、その数は膨大なものになります。

この御幣は正式には紙9枚を使います。知々理は七、五、三と入ります。


『諸権現』
こちらは幣を剣先には切りません。

知々理は同じ七、五、三です。ただし串は一尺二寸、仏壇に立てるとあります。

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