月は先人の叡智を照らす

月は運命の道しるべです

呑闇吐星~星夜見の独り言(2)

「甑嶽修験」にも掲載した旧暦について、補足し説明したいと思います。現在のカレンダーは、かつて我が国で用いられていた旧暦(天保暦)とは大きく異なっています。正直、その詳細を述べる知識は私にはありません。しかし、日常的に運命鑑定を行う際には、旧暦を見て判断いたします。ですから、旧暦に対しては強い思い入があります。それはなぜかと申しますと、私は占う際に、月や星の動きに基づき運命を鑑定します。旧暦は月の満ち欠けを観る為には欠かせないカレンダーだから、旧暦を用いる事になります。

かつて旧暦が使われていた当時、毎月の始めの一日が、決まって月が隠れる新月だった事を御存じでしょうか。この新月である1日を朔日と申します。かつては、極めて当然な事なのでしたが、今の若い世代はほとんどその事を知りません。1日が来るから1日だと思っています。しかし、昔は、新月という区切りの日だから1日なのだと、誰もが知っていました。

新月から満月となり次の新月になるまではおよそ27日掛かります。これを月齢と言います。現在の新暦では月の姿と日にちはリンクしませんが、旧暦ではそれぞれの日の月の姿が決まって同じ形となります。満月を十七夜、十八夜などと言いますが、それは旧暦の17日、18日が満月の日に当たっていたからなのです。月齢周期であるおよそ27日の「およそ」の影響で、多少はズレる日もありますが、観音様のご縁日である十七日(十一面観音)、十八日(聖観音)は大体が満月、またはそれに近い状態という事になります。観音さまは、すなわちお月さまのイメージなのです。神仏のご縁日を旧暦で見てみると、月のない新月の夜に耀く北極星を化身とする妙見菩薩は一日(新月)、お薬師さまの八日は上弦の月、阿弥陀さまのご縁日は、月が満月に向けて光を増す十五日、お地蔵さまの二十四日は下弦の月、二十八のお不動様もほぼ新月の明王さまとなります。この様に、それぞれがお月さまの起点となる姿の周辺がご縁日となっている事に気付きます。この事については、後にゆっくり解説する機会を設けたいと思います。

こうした起点となる新月、上弦の月、満月、下弦の月は身体に大きな影響を及ぼす日とされます。例えば月が完全に隠れる新月は、太陽が地球の裏側に回る為に、対面の月に光が届きません。月が地球を挟んで一直線上となるという事です。月が隠れるのではなく、実は新月は日本の上空に浮かんでいる事になります。即ち月の引力が一番作用する事になるのです。一方の満月は、月の軌道は楕円ですからやや斜に構えた位置で太陽と一直線上になります。もちろん、新月と同様に引力の作用も強くなります。月の引力は強く、地球の海水面が10メートル以上も盛り上がると言われます。これが大潮です。だから大潮は新月、満月の頃に起こるのです。新月、満月の時、地球の裏側では表面張力で海水が引っ張られます。この時に地球の裏側では、この表面張力に対し均衡を保つために遠心力が働き、同様に海水が引っ張られ満潮になる事になります。両局に海水が引っ張られますから、地球の中間地点では干潮が起こる事になります。

新月、満月に限った事ではなく、太陽と同様、月も毎日顔を出している事になりますので、毎日、地球の裏表を回りますので、満潮干潮は日に2回、生じる事になるのです。このように、月は絶えず地球に影響を与え続けています。人間は大人で体内の6割余りが水分を占めています。ですから、人間も当然、月の作用を受けている事になるのです。ですから体の調、不調にも関係する事になります。お月さまが皆さまの健康とも密接な関係があるのです。昔の人はお月さまに向かい、こうした神仏に手を合わせて、息災を祈っていた事でしょう。

こうした月や星の動きを暦とリンクさせ見てまいりますと、色々な気付きを得られます。しかし、今はカレンダーとお月様を始めとした天空の星の姿がバラバラです。こうした状態では、先人が自然を見つめて培った知恵が活きる事になりません。

私は、自然の中で祈りを高めて来た修験道の祈りを実践するに当り、新暦に基づくご縁日に、それぞれの神仏に対し祈る事にいささか疑問を感じております。祈りの力をより強いものにする為には、旧暦の基づくご縁日での祈りを復興する必要があると感じています。