多様な中国食文化

星の数ほどの中国料理に酔う

修験者カナダへ行く(2)

トロントの人口はおよそ270万人。シカゴを抜いて北米で第三位の大都市です。中心街はニューヨークともよく似ており、ニューヨークを設定した、映画やテレビドラマがよく撮影されるそうです。コストがそれだけ節約出来るという訳です。観光など出来ませんでしたが、ほんの数時間トロントのダウンタウンを車で訪れる機会を得ました。まるで映画のような巨大なスケールのビル群が迫ってくる光景は、日本のスケールを遥かに超える迫力があります。


移民の国という事で人口の四分の一は中国人だそうです。東京の人口の四分の一が異国からの定住者であったらと想像すれば、日本とは異なる都市空間である事が想像出来ましょう。白人(日本人を含む)がダウンタウンに好んで居を構える一方、アジア圏からの移民は北部のアップタウンに集中しています。情報がダウンタウンに集中する中、こうした振興地帯の様子がネット上で紹介される事はほとんどありません。まことに残念な事です。


このノースサイドで一番印象に残ったのは星の数くらいの中華料理店の多さです。あやゆる食材を胃袋に詰め込む中国の食文化を反映してか、そのバラエティーの多さにはビックリしました。どのレストランも相当うまく、日本の中華料理店はとても足元にも及びそうにありません。しかし、北京や上海、香港などから比べると見劣りすると言います。どこかお仕着せのような感じがするのでしょう。滞在中、ハンバーガーを一度口にしただけで、それ以外は全て中華料理でした。しかし、飽きるという事はありませんでした。それほど旨いという事です。


最終日の夜、四川から来たカップルが家庭料理を振舞ってくれました。トロントの本宗支部天妙寺には、同じ四川からの留学生がおります。彼らとも一緒に招待されましたが、家に入ると同時に正月の匂いがすると言います。よく聞くと、四川は貧しい地域で、かつて日常的に肉などを食べられなかった。ただ正月には、数週間かけて軒先で燻蒸した肉が食卓に上るのが常だったというのです。テーブルには野趣あふれる肉料理が並んでいるではありませんか。正月料理を一足早く私達の為に振舞ってくれたのです。


気遣いに礼をいうと、旦那さんは簡単な一品をこれから作るという。四川ではゲストを迎える時の特別料理は男性が作ると決まっているそうです。歓待に心から感動していると、数種類の大量の唐辛子と中華山椒を投入したスープに青豆の春雨を煮込んだ一皿(ボールに投入しておりました)を手早く作ってくれました。その味はただ辛いだけでなく、甘味や旨味も感じられる後を引く美味しさがありました。こうした歓待の文化に触れる事が出来、幸せでした。


後は、カンペイが始まり、飲み干した後は杯の底を見せる強烈な宴会が永遠と続きました。その後の記憶は途絶えました。